副題:目標や理念における社会課題の価値は企業にとっても個人にとっても必須要件になる
先週のコラムで触れた共同事業という概念と同様に、事業の「連携」という概念がある。こちらは、共同事業よりも少し一体性が低下する概念かもしれないが、経営資源を相互に活用するという観点では共通化する。この構造体では、社会的理念性の基盤が必要になる。(内本, 2016)
ある意味、道徳的に準拠した精神的関与の構想をこの事業連携の参加者に求めていくことにより事業連携の粘度が高まる。おそらく社会的課題を連想する、あるいは関連するような事業目標を掲げることで、そうした事業領域に関心が深い企業もしくは経営者を誘引することになるのだと思われる。『Williamsonのいう「準道徳的な精神的関与」という意味での雰囲気を連携の場へ取り込むことが重要であろう。』(内本, 2016 引用)
キャリアについても同じような現象が起こりつつあるのかと感じる。情報基盤の進展により、また、就労形態の多様化を受け入れる環境が進むにつれて、副業や兼業、高度な経験と知識を有したフリーランスの進出が目覚ましく、既存の企業活動を支える比率が年々高まりつつある。個人としての限定したキャリアしか持たない構造は中小企業の生き残り戦略としての事業の共同や事業の連携の概念を連想させる。個人のキャリアを受容的なものとしてとらえすぎることなく、それが企業組織内であれ、企業横断的であれ、相互に活用することによって、前述した中小機能の成功戦略とも連動してくるのだと思う。キャリアの共同化は、私たちの可能性を大きく拡張してくれるメカニズムである。
企業も日本的経営の特徴である新卒一括採用から、垂直統合による人材育成の画一的な人的資源管理から、外部人材を有効に、また機動的に活用する姿勢に許容度が高まりつつある。
地方の中堅・中小企業が日本の産業構造の主力であることを前提として踏まえていくと、食品業界で起こりつつある変化の動向から得られる教訓は看過できない潮流かと思う。日本列島改造論は、公共インフラの地方提供だけでなく、DXの進化とともに資源の共同利用や活用の考え方の肯定的な受容により、経済的基盤を超えて、日本の産業構造における人材活用の領域でのイノベーションの現実的な処方箋を示唆しているように感じるのである。組織エンゲージメントの規範が年少児からの教育体系に基づき構造的完成度が高い日本は、その組織の枠組を少しおらかに、広く、多様に捉えていくと、まだまだ成長の可能性が高そうである。(次週に続く)
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2023年12月8日 竹内上人
【文中参考文献】
中小企業の共同事業の成功要因:組織・契約構造の影響に関する分析 岡室博之 (商工金融,2003.1)
リ・イノベーション視点転換の経営 米山茂美(日本経済新聞社 2020)
中小企業における戦略的連携の創造的方法 内本博行 (流通經濟大學論集, 2016 Vol51. No.3)
人本主義企業 : 変わる経営変わらぬ原理 伊丹敬之 (筑摩書房 1987)
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